なぜか推しが追ってくる。
──昼休みに入り、真緒が学食へ行こうと誘いにきた。
オレはどこか重い気持ちで立ち上がり、何の気なしに外を見る。
そして、一人の男を見つけた。
「っ!」
天羽の送迎に来たり、教師と話していたりするのを何度か見かけたことがある。
まだ二十代ぐらいの、眼鏡をかけた若い男。皆に天羽恭のマネージャーだろうと噂されていた。
オレは一つ舌打ちをして、走って教室を出る。
「え、カズ!?」
真緒が驚いたように目を見開き、そのまま追いかけてきた。
「どこ行くの?」
「ちょっと文句言いに行くんだよ」
昇降口を出て、先ほどあの男を見たあたりを見渡す。
恐らく今日も、天羽の授業と仕事のスケジュールを調整するために教師と話しにきたのだろう。
話が終わったところだとしたら、もう駐車場の方にいるだろうか。
そう思ったとき、後ろから逆に声を掛けられた。
「おれに何か用か? 清水くんと高森さん」
振り返ると、眼鏡の男は薄笑いを浮かべながら立っていた。