なぜか推しが追ってくる。
ますます意味がわからなかった。
全国に大勢いるであろう天羽恭ファンの中の一人に過ぎない武藤。彼女が、天羽が役者の仕事をしている意味。
今度は真緒が疑わしそうに眉を寄せた。
「意味わかんない、天羽恭がうちの高校に転校してくる前……瑞紀と出会うよりずっと前から、天羽恭は俳優だったじゃん。言ってることおかしくない?」
その通りだ。
天羽が武藤に出会ったのはほんの数月前。武藤との付き合いの長さだけはオレが勝っている。
すると早坂は、何かを考えるように腕を組み、空を仰いだ。
「……お前ら、何も聞いてないんだな」
「は?」
「中学時代からの友人という話だったが、二人は武藤瑞紀についてどれぐらい知ってる?」
オレと真緒は戸惑って顔を見合わせる。
それでも真緒は、すぐ自信ありげに言った。
「瑞紀のことなら色々知ってるよ! 親友だもん! 食べ物の好き嫌いや靴のサイズなんかはもちろん、太鼓のゲームめちゃめちゃ得意なところも、好きなものを馬鹿にされたときは誰が相手でも関係なくブチ切れちゃうところも、可愛いのに顔を褒められるの好きじゃないところもよく知ってる!」