なぜか推しが追ってくる。
皆からどっと笑いが起きた。
まったく、何て言われようだ。わたしそんなに信用なかったのか。
……というかそれより、恭くんの前でわたしの名前を連呼しないでほしい。
そんなに名前を呼んで、恭くんがわたしの名前を覚えちゃったら、認知しちゃったらどうしてくれるんだ。
そして、「わかりました」と言った恭くんがわたしの隣に来たとき、その懸念は現実のものとなった。
「よろしくね、武藤さん」
「っ……!」
恭くんが、甘さと落ち着きを兼ね備えた聞き取りやすい声で、わたしの名前を確かに呼んだ。
待ってでもそんなことより顔が良い。やばい。ねえやばい。
テレビや雑誌、それから舞台でオペラグラス越しに、リアルに親の顔より見てきた御尊顔。今まで見た中で一番画質良いよ。
当たり前か。だって目の前にいるんだもんな。至近距離だもんな。
……と、頭で色々と感情が溢れ出していたけれど、現実のわたしはその間フリーズしてしまっていて。
恭くんが困ったように少し眉を寄せて、もう一度名前を呼ぶ。
「あの、武藤さん?」
「あっ……ヨロシク……」