なぜか推しが追ってくる。
「こや……く……?」
少し、思い出した。
昔、両親が『神山愛子、実の娘と初共演』と宣伝されたテレビドラマを見ていた。
そして「この子、数馬と同い年なのにすごい」と感心していたような記憶がある。
オレも幼いながらに、女優の娘はやっぱり子どもでも演技が上手いんだなと思った気がする。
「神山ミズキは、恭と……ついでに言えば当時は役者志望だったおれも、同じ養成所にいた。今は一般人に違いないが、彼女は元々、こちらの世界の人間だった」
早坂は、その頃を懐かしむように目を細める。
「神山ミズキはよく目立っていたよ。母親の存在だけでなく、本人も圧倒的な才能があったからな」
「てことは、もしかして」
「ああ。恭はその頃から、ずっと彼女に執着している。近くで見ていたからよくわかる」
にわかには信じられないと思う一方で、オレはいくつか納得した。
武藤は容貌を褒められると、いつも「ただの遺伝子勝ちだから」とか何とか、心の底から嫌そうにしていた。
それは、昔から「神山愛子の娘だから美人で当然」と見られてきたからではないだろうか。