なぜか推しが追ってくる。
そして天羽のことも。
転校初日、出会ったばかりの武藤をどうしてそんなに気に入ったのか不思議だった。
違うのだ。あれは天羽にとって、「出会い」ではなく「再会」だったのだ。
「武藤は中学生のときから天羽恭のファンだった。……知り合いだったなんて気配、見せたことねえぞ?」
「そのあたりの事情はおれも知らん。単純に当時の仲間を覚えてないだけかもな」
オレの疑問に早坂は簡単に答えると、「話は終わりだ」と言ってさっさと車に乗り込んでいってしまった。
残されたオレと真緒は呆然とするしかなかった。
「……なあ、どう思う?」
隣に立つ真緒を見てギョッとした。
真緒は握った拳を震わせ、怒りに満ちた表情をしていた。
こいつのことは小さな頃から知っているが、こんな顔はめったに見ない。
「……本当だとして。瑞紀は、そんな大事なこと何で教えてくれなかったんだろう」
「……さあ」
「私、あの子には信頼されてると思ってた。何でも話してくれる親友だって思ってた。……そう思ってたのは、私だけだったの?」
今にも泣き出しそうな声に、オレは答えることができなかった。