なぜか推しが追ってくる。
4.
昔の話をしよう
▽
「……恭くんの、初恋の人ってさ」
恭くんに抱きしめられたまま話を切り出したはいいけど、今さら少し不安になってきた。
見当違いだったら、あまりに自惚れすぎだから。
「神山ミズキ、ってことでいいの?」
もうずいぶんと口にしていなかった昔の名前。
わたしがまだ、恭くんと同じ世界にいたときの名前。
声に出してその名前を言っても、思いのほか胸がざわつかないことに気が付いた。
……絶対にわたしを逃がすまいとしていた恭くんの手の力が、ようやく緩んだ。
「そうだよ。神山ミズキちゃん。君が、俺の憧れで、ずっと好きだった人」
「今のわたしはただの武藤瑞紀だよ」
「……そうだね、ごめん」
「初恋の人がわたしに似てるって言ってたときから、きっと神山ミズキのことだって思ってた。……養成所にいた頃、時々話しかけてくれたし」
「ああ、やっぱり覚えてたんだ」
恭くんはそう言って、気恥ずかしそうに頬を掻いた。
「……恭くんの、初恋の人ってさ」
恭くんに抱きしめられたまま話を切り出したはいいけど、今さら少し不安になってきた。
見当違いだったら、あまりに自惚れすぎだから。
「神山ミズキ、ってことでいいの?」
もうずいぶんと口にしていなかった昔の名前。
わたしがまだ、恭くんと同じ世界にいたときの名前。
声に出してその名前を言っても、思いのほか胸がざわつかないことに気が付いた。
……絶対にわたしを逃がすまいとしていた恭くんの手の力が、ようやく緩んだ。
「そうだよ。神山ミズキちゃん。君が、俺の憧れで、ずっと好きだった人」
「今のわたしはただの武藤瑞紀だよ」
「……そうだね、ごめん」
「初恋の人がわたしに似てるって言ってたときから、きっと神山ミズキのことだって思ってた。……養成所にいた頃、時々話しかけてくれたし」
「ああ、やっぱり覚えてたんだ」
恭くんはそう言って、気恥ずかしそうに頬を掻いた。