なぜか推しが追ってくる。
違う。
わたしは恭くんに目標にしてもらえるような、そんな人間じゃない。
ただ演技をするのが楽しくて、それ以外のことを考えていなかっただけだ。
「目的が変わっただけで見える景色が全く違ったんだ。だんだん仕事ももらえるようになって、瑞紀ちゃんに言われた演技を楽しむことの意味もわかるようになってきた。なのに……」
「わたしは芸能活動を辞めてしまった」
言葉を引き継げば、恭くんは静かにうなずく。
「それでも、あの神山ミズキがこの世界をそう簡単に捨てるはずがない。俺がこの仕事を続けていればいつかまた絶対に会える、そう言い聞かせて仕事を続けていた」
だけど神山ミズキが芸能界に戻ることはなかった。
わたし本人が一番知っている。
「だけど何年か経てば、君が見てくれている保障もないのに仕事を続ける意味がだんだんわからなくなってきて、せっかく知った演技を楽しむ気持ちも忘れていった。……そんなときに、えっと、神山愛子さんとの共演が決まったんだ」