なぜか推しが追ってくる。
恭くんがわたしのお母さん──神山愛子と共演したのは例の映画のことだ。
ここにきて、これまで饒舌にしゃべっていた恭くんがちょっと口ごもった。
「それで、さ」
「うん?」
「神山さんと頑張って親しくなったんだけど……」
「ああ、そうみたいだね」
映画の告知でテレビ出演していたとき、共演者で印象に残った人として、お母さんは一番に恭くんの名前を挙げていた。
共演者と仲良くなることに悪いことなんて一つもないのに、どうしてそんな気まずそうな顔を?
不思議に思って首をかしげると、恭くんは諦めたように息を吐き、両手で口を覆いながらぼそぼそと言った。
「仲良くなった神山さんからさりげなく瑞紀ちゃんの情報を聞き出して……」
「うん」
「……通ってる高校を特定して」
「……ん?」
「転校しました。瑞紀ちゃんに会うためだけに」
「……はあああっ!?」
これにはびっくりした勢いでその場で立ち上がってしまった。
素っ頓狂な大声が響き渡ったのに気づき、慌てて口を押さえる。