なぜか推しが追ってくる。



辛うじて絞り出した声はずいぶんと上ずっていた。

そんなわたしの返事に、恭くんは嬉しそうな笑みを浮かべた。

もう一度言う。笑みを浮かべた。


………………なっ、何今の!?


ビシャぁっと、雷に打たれたような衝撃が走る。


は? え? 待って?

今、わたしに向かって微笑みかけた?


なに、え……

あなたの笑顔にいくらの価値があると思ってるんですか?

その顔は全世界に向けて発信するものであって、転校初日にたまたま隣になったクラスメイト限定のものにしたらダメでしょ!?




「壁に……壁にならなきゃ……」




認知されてしまったのだとしたら、せめて「あ、言われてみればそんな奴いたな」程度になれるよう、気配を消そう。それしかない。

静かに……極力静かに……。

ていうか、くっ……どうしてわたしの目はカメラじゃないんだ。さっきの笑顔、記録して現像したかった!!




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