なぜか推しが追ってくる。




クラスメイト達にとって天羽恭は、「武藤瑞紀がいつも騒いでいるから知っている」程度のものらしい。


確かに皆が見ているようなドラマで目立つ役をしていたわけではないし、正直言って世間的な知名度はまだまだだ。まだ世間が恭くんに追いついていない。

だから、休み時間に彼らが恭くんの周りに群がっている理由は、「芸能界の話を聞きたい」という動機がメインであり、恭くん自体への興味は二の次のようだ。


教室の片隅──というかもう教室から出てほぼ廊下で、わたしはそんな分析を真緒に語る。




「……で、瑞紀は何で天羽恭からこんな離れてるの?」


「恭くんの視界に入らないために決まってるじゃん! もう既に名前呼ばれちゃったけど、数日後に忘れてもらえるぐらい気配消す!」


「さっきの授業でもうだいぶ悪目立ちしてたけど」


「ぐぬ……」




ホームルームが終わってそのまま始まった一限目。

隣に恭くんがいる状態で、わたしがまともに授業を受けられるわけもなく。

授業が始まって三分の一も経たないうちに、古典担当のベテラン女教師から注意された。



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