なぜか推しが追ってくる。



まあ、数日したらきっと機嫌直すだろ……と数馬は言う。

確かにそうなのかもしれない。

だけど、このまま放っておいていいとは思えなかった。


しばらく黙ってから、決意を固めてゆっくり息を吐き出した。




「……わたし、ちゃんと話すよ。二人にはやっぱり知ってほしい」


「武藤……」


「でも一日ちょうだい。ちょっと気持ちを整理したいの。言いたいことを明日までにちゃんと頭の中でまとめてくるから」




わたしはもう一度ふっと息を吐いて、無理やり口角を上げる。




「だから数馬も、ちゃんと聞いてくれる?」




今まで神妙な面持ちでいた数馬だったけれど、わたしのその言葉に、二ッと歯を見せて笑ってみせた。




「当たり前だろ。何なら話し合いの場として、お前らが行きたがってた新しいカフェの予約取っといてやろうか?」


「え、本当!? あの豪華なケーキのお店? 数馬のおごり?」


「おごらねえよ。調子乗んな」




ああ、これだ。ようやくいつもの感じに戻れた。


不意に涙がこぼれそうになって、わたしは慌てて眉間を押さえた。



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