なぜか推しが追ってくる。
まずは一口食べて、ケーキの味を堪能する。
……なにこれ美味しい。
甘酸っぱい木苺の香りとミルクの味が強い生クリームが絶妙。値段はそれなりだけどその価値はある。
美味しいものを食べた幸せで、上手い具合に緊張が緩和された。
ふうっと息をついて、わたしは口を開いた。
「えっと。わたしのお母さんが女優の神山愛子っていうことと、わたし自身も昔子役をやってた……ってことを聞いたんだよね?」
二人がうなずいたのを見て、わたしは静かに笑う。
それから、一つ一つ話を始めた。
お母さんに憧れて、自分も芸能界に入ったこと。
演技をするのは本当に楽しくて、夢中でレッスンをしていたこと。
才能はそれなりにあって、養成所でも目立つ存在だったこと。
……そこで、恭くんとは実は出会っていたこと。
「仕事もね、周りの子たちと比べたらだいぶもらえてた。だけどそのうちに気付いたの。わたしがどれだけ努力して、成果を出しても……お母さんの評価ばっかり上がってるって」
さすがは神山愛子の娘。血を受け継いでいる。
お母さんは娘のわたしをすごく可愛がっていた。
だからわたしは、神山愛子にすり寄るためのだしに使われた。