なぜか推しが追ってくる。



『武藤さん、黒板を見ましょうか。……何でそっちを見てるの?』



わたしが隣の恭くんばっかり見ていたからそんな注意を受けた……わけではない。


むしろ逆で、わたしは必死に恭くんと反対側、すなわち窓を見ていたのだ。

怒られてしまったこともあり、わたしはそうしていた理由を正直に答えた。




『わたしの肺を通った空気を恭くんが吸ってしまう可能性を減らしてるんです!』


『は?』


『わたしなんかの肺から出てきた空気、神の体内に入れるわけにはいかないでしょう!』


『……早口で何言ってるのかよくわからないけど、聞き取れたところで意味は理解できそうにないからもう放っときますね』




そのやりとりでクラスは爆笑の渦に包まれた。

……わたしとしてはものすごく真剣だったから解せない。


だけどそう。皆が爆笑している間にこっそりと盗み見たら、恭くんも妙に楽しそうに笑ってたんだよなあ。

わたしのこと、クラスのお笑い担当みたいに認識してしまったかもしれない。どのような形であっても、認識されてしまうのは頂けない。



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