なぜか推しが追ってくる。
わたしは大きく息を吐き出して、またケーキを一口。糖分が染み渡る。
「……はい、これで話したかったことは以上! 質問の場合は挙手をお願いします!」
すると真緒が「じゃあ、はい」と手を挙げる。
「今までこのことを教えてくれなかった理由、聞いていい?」
これは当然聞かれると思った。
こくんと軽くうなずいて答える。
「親友の二人に、そんな格好悪い自分を知られたくなかったから、かな」
言いながら思う。ここもまた逃げていた部分だ。
「わたしが女優の娘だとか元子役だとかって知ったところで数馬と真緒の態度が変わるとか思ってたわけじゃない。あの世界から逃げ出した意気地ないところを知られたくなかったの。ただ、それだけ」
わたしの言葉を聞いた真緒は、軽くうつむいて「そっか」と呟いた。
それから小さな声で謝った。
「ごめんね瑞紀。私昨日嫌な態度とったよね。──私、悔しかったの。私の知らない瑞紀を、あのいけ好かない天羽恭のマネージャーに教えられたことが」
「本当にごめん」
「もう謝らないで。私昨日ね、このこと家で愚痴ったらお兄ちゃんに怒られちゃった。誰にだって知られたくないことぐらいあるのに、何でもかんでも知りたがるのは私の悪い癖だって」