なぜか推しが追ってくる。



「壁になる決心したのに……。これじゃめちゃくちゃよくしゃべる壁だよ。でもさ、こんな至近距離にいるのに、静かに知らないフリとかどう考えても無理じゃん」




大きく大きくため息をついた。

ちなみに、わたしは元からクラスで目立たないタイプというわけではない。

よくしゃべる方だし、声もでかい。

あと顔もなかなかの美少女に分類されるはずだ。まあこれはただの遺伝子勝ちなのだけど。母親似なのだ。

そういうわけで、大人しく気配を消して壁になるというのは、最初からちょっと無理があった。




「瑞紀が憧れの天羽恭に『違う世界の人でいてほしい』って思うのはわからなくもないけど……。名前覚えてもらうぐらいよくない?」


「あのね、『認知される』っていうのは、同じ世界の住人同士じゃないとあり得ない事象なの。だから恭くんがわたしの名前を覚えるなんてあってはならないの。恭くんはわたしの住む下界に何かの間違いで下りてきてしまったの」


「な、なるほど?」




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