なぜか推しが追ってくる。



この距離から見ても麗しすぎてドキドキするんだから、さっきあれだけ近づかれたら腰抜かすのなんて当然だな。

……などと一人で納得しながら、わたしはだんだんと物語の世界にのめり込んでいく。


途中こっそり周囲の人の表情をうかがってみると、皆一様に舞台上に釘付けになっており、くすりと笑ったり、緊張の面持ちで次の展開を待ったり、熱くなる目頭をそっと押さえたりしていた。


今日ここにいる多くの原麗華ファンは、こういう舞台を見たことってあんまりないかもしれないけれど。

どう? 演劇って面白いでしょ?



皆格好良くて、キラキラしていて。

ここから見ると、やっぱりすごく美しい世界だと思う。




「『ずっと自分のことが嫌いで仕方がなかった私のことを、あなたは好きだと言ってくれた。受け入れてくれた。……こんな私ごときが、あなたの隣にいたいって望んでもいいのかなぁ』」




やがて物語はクライマックスへと差し掛かる。

高まり切った劇場の熱。


皆の視線が集まる中で、恭くん演じるヒーローは、後ろからヒロインをぎゅっと抱きしめた。




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