なぜか推しが追ってくる。
だけどわたしの期待の眼差しを受けて、恭くんはちょっと申し訳なさそうに言葉を濁した。
「うん……まあ本来の使用用途はそうなんだろうけど。今日はそうじゃなくて……」
「ん?」
「えっと、とりあえず入ろう」
不思議に思いながらも、わたしは恭くんと案内された部屋へ入る。
そこまで広くもない個室。
ところどころ傷があったりはするけれど、それなりに綺麗なソファー席。
機材もまあよく見るもので、良くも悪くもごく普通のカラオケだ。
だけど……
「わあ、モニター思ったより大きいね。あ、タンバリンも置いてある。それでこのタブレットみたいなので歌いたい曲選べるんだね! 歌声分析してくれる採点なんてモードもあるんだ!」
恭くんは目をキラっキラさせていた。
やばいな。わたしの推し可愛いがすぎないか??
恭くんはちょっとそわそわした様子でわたしを見る。
「……ごめん、やっぱり一曲だけ歌ってみてもいい?」
「もちろんです!!!!!」
すっごい大声で答えてしまった。
ほら、まあカラオケって歌うための場所ですからね。うん。