なぜか推しが追ってくる。
だけど、さすがにそうではなかったらしい。
「始まる前、原さんが行方不明だったときさ。イトウくんが瑞紀ちゃんに代役をやれないかって聞いてたでしょ」
「あ、うん。言ってたねそんな冗談」
「あれ、きっと半分ぐらい本気だったと思うんだよね。俺も正直ちょっとだけ『あ、それいいな』って思っちゃったし」
「……」
「だから本当に、俺のわがままなんだ。……瑞紀ちゃんの相手役を、やってみたい」
ごくりと唾を飲み込んだ。
推しの望みは叶えたくなってしまうのがファン心というもの。
……だけど今回に限ってそれは言い訳で。
その提案に、これ以上ないほど胸が躍っていた。
「うん、やらせて」
「……! いいの!?」
「でもその前にちょっと聞かせてほしいんだけど……」
演技に集中するためにも、胸にあるわだかまりは解消しておきたい。
だからこのことは先にハッキリさせておく。
「最後のシーンは、原さんと本当にキスしてたんですかっ?」