なぜか推しが追ってくる。



だけど、さすがにそうではなかったらしい。




「始まる前、原さんが行方不明だったときさ。イトウくんが瑞紀ちゃんに代役をやれないかって聞いてたでしょ」


「あ、うん。言ってたねそんな冗談」


「あれ、きっと半分ぐらい本気だったと思うんだよね。俺も正直ちょっとだけ『あ、それいいな』って思っちゃったし」


「……」


「だから本当に、俺のわがままなんだ。……瑞紀ちゃんの相手役を、やってみたい」




ごくりと唾を飲み込んだ。

推しの望みは叶えたくなってしまうのがファン心というもの。


……だけど今回に限ってそれは言い訳で。


その提案に、これ以上ないほど胸が躍っていた。




「うん、やらせて」


「……! いいの!?」


「でもその前にちょっと聞かせてほしいんだけど……」




演技に集中するためにも、胸にあるわだかまりは解消しておきたい。

だからこのことは先にハッキリさせておく。




「最後のシーンは、原さんと本当にキスしてたんですかっ?」





< 197 / 223 >

この作品をシェア

pagetop