なぜか推しが追ってくる。
クライマックスのシーンは、主役の二人に立ちはだかるいくつもの恋の障害を乗り越えた後、ヒロインがヒーローのことを好きになるきっかけとなった教室に呼び出すところから始まる。
爽やかな風が吹いているような気がする、すごく青春っぽい一幕だ。
「『何だか懐かしい気がするね、この教室』」
恭くんが、わたしの読んだセリフを受けてヒーローのセリフを言う。
間近で聞いているからなのか、……それとも相手に合わせて変えているのか。
恭くんのセリフの数々は、舞台の時のものよりもさらに熱がこもっている感じがした。
……そうだね。せっかくだから、“わたしが”演じないとね。
「『ずっと自分のことが嫌いで仕方がなかった私のことを、あなたは好きだと言ってくれた。……受け入れてくれた!』」
原さんはこのセリフを、一気に、少し早口でしゃべっていた。
自分に自信がなくて、どうしても卑屈になりがちだったヒロインを、それはそれで上手く表現していたと思う。
だけど、わたしが原作を読むなりして理解したこのヒロインは、原さんの演じるものとは少し違う。
この言葉は、もっとゆっくりと言葉を味わうように話すのだ。