なぜか推しが追ってくる。
1.

推しとは共有すべきものである





推し。それすなわち、心のオアシス。

だから、勉学という名の砂漠を彷徨い続け疲れ切った高校生は定期的に摂取するべきなのだ。そうしないと過酷な環境を生き残れない。




「──ってことでお願い見逃してくださいよ先生~!!」


「ダメなものはダメだ。武藤(むとう)、お前これ何回目だよ」


「三回目ぐらい?」


「五回目だ」




こんなに力説したにもかかわらず、先生は冷たい目でわたしに言った。

机の上には、ようやく半分ぐらい埋めた反省文。まじで終わらないんだな、これが……。


こんなもの今すぐ放り出して逃げたいところだけど、先生の手には買ったばかりのファッション誌という名の人質があるものだからそれもできない。


今朝学校に来る途中見つけたその雑誌は、ずっと探していた上に残り一冊だったので迷わず購入した。


本当は家に帰ってゆっくり見るつもりだったけど、我慢できず昼休みにペラペラめくっているところで先生に見つかりました……と。



わたしは「うわ~!」と頭をかきながら、必死に残りの空白の文字をうめていくしかない。



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