なぜか推しが追ってくる。
「武藤さん、名前、ミズキっていうんだよね」
「なっ……!」
「ミズキちゃん。いい名前、可愛い」
アッ、わたし死ぬのかな今日。
こころなしか心臓のあたりが苦しい気がする。
ぐっ、落ち着け武藤瑞紀。死んでたまるか。
恭くんはあれだ、ミズキという名前が可愛いという感想を言ってくれただけだ。
「アリガトウ……」
「武藤さん、俺のファンって本当?」
名前呼びに色々な意味で心臓の止まる思いをしたわたしは、呼び方が“武藤さん”に戻っていることにこっそり安堵する。
それと同時に答えに詰まった。
その件については既に周りから散々聞いただろうに。
たぶん恭くんは軽い気持ちで、コミュニケーションの一環として聞いてくれたのだ。あんまり全力で感情ぶつけてしまったら、ドン引きされてしまう。
恭くんへの愛を全力でぶちまけたいところだけど、ここはぐっと我慢して、どうにか無難な返事を絞り出した。