なぜか推しが追ってくる。
それは、家庭科部特製ローズマリークッキーを手に入れるべく列に並んでいたときのこと。
実行委員の腕章を付けたとある2年の女子生徒が、背後から音もなく現れてわたしの肩を掴んできた。
「枠はちゃんと空けてあるの。もう腹を括って出てくれるよね?」
「嫌だ嫌だ嫌だ! わたしずっと断ってますよね!?」
「昨日の演劇部の発表で武藤さんの注目急上昇なの! 絶対に盛り上がるから!!」
「えっと……瑞紀ちゃん、この先輩は?」
突然列に乱入してきた先輩に驚いた様子の恭くんがわたしに尋ねる。
それに対して、わたしではなく先輩が答えた
「こんにちは! 文化祭実行委員ミスコン&ミスターコン担当です! 武藤瑞紀さんをミスコン当日飛び込み参加枠にスカウトしにきました!」
「だから嫌ですってば! 普通の参加枠逃げきれたのに飛び込み参加枠まであるとか聞いてない……」
「ああ、そういえば俺もミスターコンに誘われたっけ」
恭くんが思い出したように言えば、実行委員の先輩は悔しそうに唇を噛む。