なぜか推しが追ってくる。
「ミスコンは今日、ミスターコンは明日だから。仕事があるって言われたら無理強いできなくて」
「仕事じゃなくても無理強いはダメだと思います!」
「だって、黙っていれば究極の美少女武藤さんが出場しないなんて!」
「『黙っていれば』は余計では!?」
ぜえはあと肩で息をする。
しつこいぞこの先輩。
「ていうか何でそんなに嫌なのよ? 目立つの苦手なタイプじゃないでしょどう見ても」
「だってミスコンって要するに『貴女が可愛いです』って大々的に認めてもらうだけのイベントですよね? そんなのに出てる時間があるなら恭くん眺めてる方が100万倍有意義なんですもん!」
「ちょっと、出場者に喧嘩を売らないで……」
先輩はようやく、頑ななわたしが面倒くさくなってきたらしい。
腕を組んだまま大きくため息をついた。
「わかったわ。じゃあ、武藤さんの代わりに出場してくれる子紹介してくれたら諦めてあげる。ただし、武藤さんと同等かそれ以上に可愛い子ってのが条件ね」
「そんな代わりを見つけないと辞めさせてもらえないブラックバイトみたいなことを……」