なぜか推しが追ってくる。
ぐはっ。
胸がキュンキュンを通り越してギュンギュンいってる。
いかん……恭くん、その台詞は……。
わたしがファンだと知ってリップサービスしてくれたのだとわかっていても、これは破壊力がすごい。
もう今すぐ窓を開けて全世界に向けて叫びたい。
わたしの推しが尊すぎるーーーーっ!!!!!
…………だけど実際にそうするわけにはいかないので、この感情は押し殺す他なく。
我慢すればするほど心臓のギュンギュンが増していく。
わたし、そのうち心不全で倒れるかもしれない。それで死んだら、死因がファンサの受けすぎということになってしまう。
死後笑いものになりそうだけど、幸せすぎる最期だな。あはは。
「遅れてすまん。授業を始める……武藤、席につけ」
授業開始のチャイムが鳴ってから十分近く経って教室にやってきた先生が、わたしの方に目を向けて怪訝そうな顔をする。
わたしが静かに立っていたからだ。
「先生……保健室行ってきます」
「どうした、体調悪いのか?」
「ここにいると、心臓が痛くてたまらないんです……」
「……そうか。じゃあ武藤、座って教科書開け」
訴えは、当然のごとく却下された。