なぜか推しが追ってくる。




「エントリーナンバー15番、1年2組天羽恭子、です」




緩くウェーブがかった茶色いロングヘアのウィッグを付け、白のワンピースに身を包んだ恭くん。声も少し高くしている。

プロとしてのプライドから「天羽恭子」という女子を演じ切ろうという気持ちと、どうして男の自分がミスコンに出ているのだろうという気持ちで葛藤しているのだろう。その笑顔には若干の戸惑いがある。

だけど可愛いです。めちゃめちゃ可愛いですやばい。



「きょうく……じゃない、恭子ちゃん! 頑張れ!」



響き渡る大きな声援。もちろんわたしのものだ。

それを合図に、皆から「可愛い!」「女子より可愛い」「こっち見て~!」などと声が上がり始めた。



「おお~。大人気ですね! ではこのまま、PRタイムに移りましょう!」



他の参加者を見て知ったのだけど、どうやらミスコンというのは見た目だけで投票するのではないらしい。一分間の“PRタイム”でフリートークをしたり、何か特技を見せたりするのだ。




< 220 / 223 >

この作品をシェア

pagetop