なぜか推しが追ってくる。



今日だけでクラスのほぼ全員が一回は恭くんに話しかけていたけど、そういえば数馬は全く興味なさそうな顔でいた。むしろちょっと睨んでた。何かが気に入らないのかもしれない。

そう思いつつ、わたしはムッとして言い返す。



「いーや間違いなくあれはファンサだよ! ……いや、わたしの反応見て遊ぶことが恭くんの娯楽になっているのならばやぶさかでないけれども」


「いやだから、おもちゃとして遊ぶみたいな意味じゃなくて……ファンを甘い言葉でその気にさせて手を出すつもり……みたいな」


「なっ!」


「ゲーノージンならしそうだろ、そういうの」


「芸能人への偏見がすごいよ数馬……」


「武藤、顔は良いんだから狙われてんじゃねえの?」




顔“は”をそう強調しないでくれ。どうせわたしの良いところは外見の遺伝子だけですよ。


一瞬卑屈になりかけてハッとする。

いかんいかん。もし今、部活でこの場にいない真緒がいたら、「瑞紀、表情険しいよ~。笑って笑って」と言われてしまうところだった。


数馬は別に悪意を持って言ったわけじゃない。どちらかといえばわたしじゃなく恭くんへの悪意がある。

正さねば。


< 24 / 223 >

この作品をシェア

pagetop