なぜか推しが追ってくる。
恭くんは、わたしがあげたチョコを口に放り込みながらうなずく。
「うん。芸能人が珍しいみたいだね。前の学校は芸能人だらけのところだったから、無名な俺なんて見向きもされなかったんだけど」
「そっか」
そういえば、恭くんはどうしてこの学校に転校してきたのだろう。
聞いた感じ、前の学校は芸能コースがあるようなところだったと思われる。
仕事の融通もききやすいし、珍しがって群がるような人もいないのなら、絶対にそちらの方が環境が良い。
まあ、そういった踏み込んだことを聞ける間柄ではないし、なるつもりもないけれど。適度な距離間大事。
「でもやっぱり、ここでもまだ無名なのには変わりないんだけどね。芸能界の話とかどんな有名人と知り合いなのかとかは聞かれるけど、俺の出てる映画とか見たって言ってくれる人は全然いないし」
「嘘っ! わたしは恭くんが出演してるやつ全部……」
全部見てるし何ならDVDも揃えてるのに。それこそ“子どもC”みたいな役柄であっても。
……と言ってしまいそうになって慌てて口を塞ぐ。