なぜか推しが追ってくる。
演技をするために生まれてきたような子なのだと思っていた。
彼女がこの世界を捨てるなんて、考えたことさえなかった。
「まあ、何にせよ新たに関係を作っていくつもりですけどね。ここまで来て、もう怖いものなんてないですから」
『だろうな。おれも応援してるよ。あわよくば彼女をまたこちら側に引っ張り出してこい』
「ふふ、善処します」
『じゃ、また後でな。夕方から神山さんとクイズ番組にゲスト出演だ。コンディション整えとけ』
「はい」
俺は通話を切ると、「ねえねえ誰と電話してたの~?」と言いながら寄ってくる、クラスも学年もわからない女子生徒をどうにかあしらって教室の席に戻る。
そして、教室の真ん中で友人二人と楽しそうに話している武藤瑞紀に目を向けた。
「6年……。まあ、人が変わるのに十分すぎる期間なんだろうな」
教室のざわめきのせいで、俺の独り言に反応する人はいなかった。