なぜか推しが追ってくる。
真緒と数馬は慣れたもので、ぶつぶつ言いながらスマホを見るわたしを「せめて食べ終わってから見なよ」と生ぬるい目で見守っている。
だけど、そんな平和な気分でいたわたしの耳に、少しばかり不穏な声が聞こえてきた。
「ねえねえ、天羽くんって彼女いるの~?」
金平糖にメープルシロップをかけたのかと思うぐらいに甘ったるい女の子の声。
思わず耳をそちらに向けると、そんな質問にも誠実に答える恭くんの声がする。
「いないよ。今は仕事に集中したいから」
「え~、いないのお? じゃ、アタシりっこーほする! 彼氏が俳優とかめっちゃ自慢できる~」
……どこの誰か知らないけど。
バっっっっっっカですか!?
『仕事に集中したいから』って言ってたでしょうが。なぜそれで立候補する流れになるんだ。
そして今度は別の女子の声。
「ちょっとズルい! ねえ天羽くん、あたしは? あたし実は中学生のときちょこっと読モやってたんだ~。元モデルなら俳優の天羽くんともちゃんとつり合うっしょ?」