なぜか推しが追ってくる。
それ今普通に一般人!
つり合うつり合わないで言ったらつり合ってないし、恋人になるのにつり合い関係ないし、だからそもそも恭くんは仕事に集中するため恋人はつくらないんだってば!
「……瑞紀。ものすごく腹が立つのはわかるけど、落ち着いて~」
「落ち着いてるよ」
「鏡見てから言おうか。笑って笑って」
真緒に手鏡を押し付けられたのでのぞいてみると、そこには般若のお面が映っていた。よく見たらわたしだった。
まずいまずい。
わたしは静かに目を閉じて、何度か深呼吸をした。
大丈夫。恭くんはプロだ。こういうちょっとアレな人のあしらい方も心得ているはず。
やめだ。もう聞かないでおこう。
わたしがそう決意した直後、今度は違う方向から、恭くんに群がる女子たちに対抗するような声があった。
「何だあれ。特に売れてもないくせに、一人前に芸能人ぶってウぜえ」
「だよな。天羽恭なんて名前、聞いたことなかったし」
「どうせ芸能コースがあるような学校じゃモテないから、わざわざウチみたいな普通の高校来たんだろ」
「ははっ、ありえる」