なぜか推しが追ってくる。




恭くんのいるところからちょっと離れたところにいる数人の男子たち。

完全に本人に聞こえるように言っている。




「っ……」


「瑞紀~」


「……」


「笑顔笑顔……」


「……ごめん真緒。無理だわ」




堪忍袋の緒がブチ切れる音がした。もちろん幻聴である。何だろうね堪忍袋って。


無理やり口角を上げたわたしは、ゆっくりと立ち上がり、バンっと力任せに机を叩いた。

その音は想像以上によく響き渡る。


急に周囲がピタリと静かになった。


──わたしは、スッと大きく息を吸い込む。そして言った。




「恭くんの素晴らしさを語り合える同志は歓迎です!!」




こちらを見る人たちが、面白いぐらい皆同じ顔をしていた。

目が点、口がぽかん。

恭くん本人でさえだいぶ驚いた表情。




「顔は間違いなく国宝級のイケメン。それでいてたまに見せる照れ笑いはくっっっそ可愛い。普段の話し方は穏やかなのに、役作りすれば荒々しい俺様キャラとかも完璧。演技力が高すぎるんだよ本当に……」




ああもう、恭くんの良いところなんてまだまだいくらでも出てくるけど、本題はこれじゃないから切り上げ!





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