なぜか推しが追ってくる。
「だからそんな恭くんを好きになってしまう気持ちはわかる! 痛いほどわかる! だけどね、ファンなら推しを困らせるのはご法度! 『仕事に集中したいから彼女がいない』なんてファンをガッカリさせないための方便だよ気付け!! 真に受けて自分売り込むな馬鹿か!」
「あ、あんた何様? アタシが天羽くんの彼女になりたいのは本心だし、アピールするのなんて自由でしょ~?」
反論してきたのは、先ほどの金平糖にメープルシロップかけたみたいな甘い声の女子。
バチバチにメイクされたお顔で睨まれるとなかなかの迫力がある。
でも屈してなるものか。
「1年2組武藤瑞紀、天羽恭オフィシャルファンクラブ会員番号15番です!」
「うわキモ、ガチじゃん……」
「確かに恋愛は自由。だけど『彼氏が俳優とかめっちゃ自慢できる』なんて、人を肩書でしか見てないような発言を本人の前でしちゃうような人が、真剣に恭くんに恋をしているとは思えないけど?」
「む……それは……」
図星だったらしい。
彼女は悔しそうに唇を噛んで、面倒くさそうなのに捕まったとでも言いたげに目を逸らした。
「それから、……そこの眼鏡の人」
わたしは次に、恭くんの悪口を言っていた男子たちの方を向いて、偶然装飾品に特徴があった一人を指名する。