なぜか推しが追ってくる。



わたしが必死になって書いた反省文、別に読んだりしないんだろうな。まあ、雑誌さえ返してもらえればどうだっていいんだけど。


にやける口を押さえながら雑誌の中の恭くんを愛でる。


それからしばらくして、先ほど先生が出て行った教室の扉が、また音をたてて開いた。




「おー。無事に取り返したんだね、瑞紀(みずき)




机と椅子のセットを軽々と持ち上げながら入ってきたのは高森(たかもり)真緒(まお)。活発そうなショートカットがトレードマークのわたしの親友だ。

その後ろには同じく親友でこちらは男子、清水(しみず)数馬(かずま)もいる。


わたしと真緒と数馬。中学時代からよくつるんでいたこの三人は、同じ高校に入学して奇跡的に皆で同じクラスになった。わたしは中学校で二人に出会ったけれど、二人はもっと前からの知り合いらしい。幼なじみというやつだ。




「武藤も懲りないよな。前はDVD持ってきて没収されてたじゃん」


「あのね数馬、あれは深い訳があったの。夜に恭くん演じる小生意気な中学生が出てるドラマ、好きなとこだけエンドレスリピートしてたら朝寝坊してね。急いで準備してたら教科書にDVDが紛れてて。そしたら! なんと、そんな日に限って持ち物検査が!」


「ただのドジと不運だな。つーかそんなに良いかよ、その恭くんとやらは」




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