なぜか推しが追ってくる。
……が、続いた言葉は、しばらく意味を理解できないぐらい意外なものだった。
「彼女がいないっていうの、本当なんだけど」
「……は?」
「だからさ、さっき武藤さん、俺が『彼女がいない』って言うのはファンをガッカリさせないための嘘だって言ってたじゃん。でも、本当だから」
「そ、そっか……ごめん……?」
恭くんは少し照れたように目を逸らす。
な、何て珍しい表情を……。ちょ、シャッターチャンスですよカメラマン!
あ、カメラマンいないな。しょうがないわたしの心のカメラにだけ残しときますちくしょう。
「まあ、確かに嘘もあるんだけどね。彼女をつくらない理由は『仕事に集中したいから』じゃないよ」
「うん?」
「本当の理由は、……初恋の女の子のことが忘れられないから、なんだ」
?
ハツコイノオンナノコ???
……いや、うん。まあ16歳男子なんだから初恋ぐらいしてて何もおかしくない。初恋が何歳頃の話か知らないけど、その初恋の子を今でも想ってるとはだいぶ一途で可愛いというか。
ファンとしては新たな一面大発見ではあるけども……
「え、えと、何でわたしにそんな話を?」