なぜか推しが追ってくる。
まさか、恭くんへの愛を語ってしまったせいで、わたしも先ほどの女子たちのように、恭くんを狙っている一人だと思われてしまったのか。それで遠回しに諦めるように言っているのだろうか。
叫びたい。誤解だ。
わたしは、推しには遠い世界の住人でいて欲しいんだ。断じてガチ恋はしていない。
緊張で身を固くするわたしに、恭くんはなぜかゆっくり顔を近づけてきた。
そして、耳元に吐息がかかる距離で、ささやくように言った。
「その初恋の女の子が、ミズキちゃんにそっくりだから思わず、ね」
「っ……!?」
「顔はもちろん、声や、不思議と周りを惹きつける魅力なんかも……本当によく似てる」
……これ以上、言わせてはいけない気がした。
とある可能性が一つ、わたしの頭をかすめたのだ。
「わたし、は……その子じゃ……」
「瑞紀ー? どうしたの? 早く教室戻ろ」
わたしが来ていないことに気付いた真緒が戻ってきた。
今の状態を見られるのはまずいと咄嗟に判断し、わたしは半分押しのけるようにして恭くんから離れる。
「い、今行く!」