なぜか推しが追ってくる。
恭くんは、わたしに言われて見るからにシュンとした。
「ごめん。確かに考えが甘かったかも。瑞紀ちゃんに迷惑かけるところだったよね」
「え、ううん! わたしのことはどうでもいいの。ただ、これからどんどん売り出さなくちゃならない恭くんに、女の影がちらつくのは良くないから……」
「俺、朝からかなり浮かれててさ。おかげで約束の三十分以上前に来ちゃったんだよね」
恭くんはそう言うと、照れくさそうに頬を掻いた。
浮かれ……?わたしと映画を見に行くのをそんなに楽しみに……?
……。
妙なことを考えそうになって、とりあえず自分で自分の顔を殴った。
落ち着け。だからファンサービスなんだよこの台詞は。
「んん……まあ」
わたしは軽く咳払いして言う。
「お互い早めに来たから映画までまだちょっと余裕あるし、マスクと帽子ぐらい買いに行こう?」
駅のそばに薬局があったはずだから、とりあえずマスクはそこで。帽子は……ショッピングセンターまでに服屋さんがあったかな。