なぜか推しが追ってくる。
「えーっと、瑞紀に質問っ! 瑞紀がサイン会か何かで天羽恭に会ったとします。もしもよ、もしそこで天羽恭が瑞紀のことを見て一目惚れしちゃったらどうしますか? 告白されたら付き合いますか?」
よく意図のわからない質問。だけどそれには即答だった。
「無理無理無理無理! 絶対ダメ! 恭くんはね、わたしみたいな落ちぶれた女を恋愛対象にしてはならない神なの! わたしはあくまでも大勢のファンの中の一人じゃなきゃダメなの!」
これはわたしの信念。
わたしが森羅万象の中で最も推している恭くんだけど、彼の素晴らしさは共有するべきものであり、一人占めするものではない。
だから万が一にでも「独り占めしたい」なんて欲を持ってしまうことのないよう、恋人妄想みたいなのはしないように個人的に心がけている。
結局は、手の届かないところから応援することこそが幸せなのだ。
「うんうん。瑞紀ならそう言うよね。……じゃあちなみに、天羽恭とカズ、同時に告白されたらどっちと付き合う?」
「は、オレ?」