なぜか推しが追ってくる。



というか恭くんよ。「デートみたいだったね」なんて、なぜそんなに無邪気に笑えるんだ。否定しなきゃダメだろそこは!

あと飲んでるものがオレンジジュースなの可愛いな。




「俺とデートするのは嫌だった?」




何を思ったのか、恭くんはそう言って下からのぞきこむような姿勢でわたしの顔を見上げてきた。


伊達メガネ越しで一番映える、完璧な角度の上目遣い。

ちょっと不安そうなトーンの声。


だけどわたしにはわかる。

これは意図的に作られた表情であり、彼が心から不安に思っているわけではない。


その証拠に、わたしが首を振れば「よかった」と一瞬で笑顔に変わる。




「俺はすごく楽しかったよ。瑞紀ちゃんとデートできて」


「ぐっ……そ、そっか。……そうだよね、天羽くんは普段忙しいから、“クラスメイト”と“買い物”する時間なんてなかなか取れないもんね」




これ以上誤解させるワードを並べないでくれ……という気持ちを込めて、「武藤瑞紀という特定の女子」ではなく「ただのクラスメイト」であること、「デート」ではなく「ただの買い物」であることは強調しておく。





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