なぜか推しが追ってくる。



──疲れているせいか、頭で思っただけのことと言葉に出したこととが曖昧になってしまっている。余計なこと口走ってしまわないよう気を付けなければ。

数分前、そう気を引き締めたはずなのに。



わたしは、余計なことを口走った。




「やめてよ。こういうのされると……本気で好きになっちゃう……」




声に出ていたと気が付いたのは、わたしを見つめる恭くんの目が、驚いたようにじわじわと見開かれていったから。

慌てて口を押さえたけど、どう考えたって遅い。




「瑞紀ちゃん。それって」


「ち、違うよ。ファンとしてってこと! 本気でファンになっちゃうってこと……」




その言い訳が苦しいのは自分でもわかっている。

わたしが恭くんのことを「ファンとして本気で好き」なのは、今に始まったことじゃないのだから。


それにきっと、恭くんはそのあたりのニュアンスを聞き分けられないほど鈍感じゃない。





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