なぜか推しが追ってくる。
同担歓迎。ガチ恋勢ではない。
……それは、周囲へ自分のスタンスを表明するためではなく、自分へ言い聞かせるための言葉だった。
恭くんの素晴らしさは共有するべき。そう思えるのだから、違う世界に住む彼に恋愛感情を抱いているわけではない。
そう言い聞かせて、自分の心を守っていた。
「ごめん」
わたしは短く言って立ち上がる。
「瑞紀ちゃん!」
その場から逃げ出そうとするわたしを、だけど恭くんは引き止めた。
わたしの手首を掴む力は、思っていたより強い。
それでも、どうにかしてその手を振り払った。
「ごめん。わたし帰る。また学校で」
「待って瑞紀ちゃん」
ちょっとでも気を緩めれば涙が出そうだ。
もう限界なんだと思い知る。
自分の気持ちを誤魔化すのも、恭くんはただの推しだと言い張るのも。