なぜか推しが追ってくる。




月曜日。

隣の恭くんの席は朝から空いていた。今日は仕事が入っているのだろう。


土曜日のことで気まずかったから、正直ホッとした。


おかげで一日中、穏やかな心でいつも通り過ごすことができた。


……と思ったのだけど、傍から見ればいつも通りではなかったようで。

放課後、失礼極まりない二人の親友(真緒と数馬)が、机に伏せるわたしの顔を覗き込みながらこんなことを言ってきた。




「ねえカズ。今日瑞紀がすごい変」


「確かに、こいつがこんなに静かなのは異常だよな」




今日はいつもより口数が少なかったのは認める。

だけどそれで異常呼ばわりですか、親友たちよ。




「わたしだって、ちょっと元気がない日ぐらいあるもん」


「え~? いつもなら『ちょっと恭くん接種したらすぐ元気になる! 推しはどんな栄養剤より効果があるからね!』とか言ってるじゃん」




……言ってるけれども。

今回はその恭くんこそが元気を無くした原因だからなあ。




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