なぜか推しが追ってくる。
「ねえ瑞紀、私今日部活サボる」
わたしの頭をツンツンつついて遊んでいた真緒が、いきなりそんなことを言った。
部活好きの真緒がサボるだなんて珍しい。
「瑞紀は部活ないし、カズも今日は塾休みでしょ? 今から三人でゲーセン行こうよゲーセン!」
「ゲーセン?」
「ストレス解消だよ~。せっかくだから格ゲーがレーシングゲームで対戦しよ! 私と瑞紀でカズをぼっこぼこにするの!」
「何でオレは負ける前提なんだよ。でもいーじゃんゲーセン。行こうぜ」
わたしはまだ行くと言っていないのに、数馬まで乗り気だ。
元気がなさそうなわたしを見て、何も聞かず気分転換させようとしてくれているんだろうな。
……まったく。気の利いた奴らだ。
だけど、今は格ゲーやレーシングゲームという気分にはなれない。だから正直に言った。
「わたし太鼓がいい。難易度鬼でスコア対決しようよ」