なぜか推しが追ってくる。
気遣わしげな声。
たぶん、ずっと気になってはいたけど、聞くに聞けなかったのだろう。
土曜日に恭くんと映画に行くことになってしまったことについて、元々二人には話していた。
このタイミングで元気を無くしていたということで、原因が恭くんにあることは察していたのかもしれない。
「まあ、ちょっとね……。恭くんと何かあったっていうよりは、……ただ自分の気持ちが不安定になってるだけなんだけど」
「そうか。無理にとは言わねえけど、オレも真緒も話ならいくらでも聞くからな」
「……ありがとう。うん、やっぱ持つべきものは友達だよなあって思うよ」
でも、やっぱり今は気持ち的にも相談できそうにない。
だから代わりにこんなことを聞いた。
「ねえ。数馬は好きな人っている?」
「……は? …………はあっ?」
「や、そんな慌てなくても。軽い気持ちで聞いただけだから」
これだけでこんなに真っ赤になるとは。
数馬は恋愛関係の話題、あんまり得意じゃないんだったかな。