なぜか推しが追ってくる。



気遣わしげな声。

たぶん、ずっと気になってはいたけど、聞くに聞けなかったのだろう。


土曜日に恭くんと映画に行くことになってしまったことについて、元々二人には話していた。

このタイミングで元気を無くしていたということで、原因が恭くんにあることは察していたのかもしれない。




「まあ、ちょっとね……。恭くんと何かあったっていうよりは、……ただ自分の気持ちが不安定になってるだけなんだけど」


「そうか。無理にとは言わねえけど、オレも真緒も話ならいくらでも聞くからな」


「……ありがとう。うん、やっぱ持つべきものは友達だよなあって思うよ」




でも、やっぱり今は気持ち的にも相談できそうにない。


だから代わりにこんなことを聞いた。




「ねえ。数馬は好きな人っている?」


「……は? …………はあっ?」


「や、そんな慌てなくても。軽い気持ちで聞いただけだから」




これだけでこんなに真っ赤になるとは。

数馬は恋愛関係の話題、あんまり得意じゃないんだったかな。




< 71 / 223 >

この作品をシェア

pagetop