なぜか推しが追ってくる。
「でもそっか。数馬にも好きな人が……。じゃあさ、これも聞きたいんだけど……」
わたしは短く息を吐いて、数馬の顔を見る。
「そういう気持ちって、どうしたら消せる思う?」
「……は?」
恭くんへの気持ちが恋心だという自覚なんて、したくなかった。
恋であることを自覚した瞬間、無意識のうちに押し殺していた醜い下心や独占欲が、わたしの中で顔を見せはじめることがわかっていたから。
だからただ純粋に、遠くから応援していたかった。
大勢ファンのうちの一人でいたかった。
できることなら、恭くんの載っている雑誌を見てはキャーキャー言っていただけの、彼が転校してくる前の時間に戻りたい。
「ごめん。変なこと聞いた」
「……新しい恋をする、とかじゃねえの?」
「え?」
「気持ちを消す方法。例えば、もっと近くのやつに目を向けてみるとか……」
わたしはもう一度「え?」と呟く。
失礼ながら、数馬がアドバイスをくれるとは思わなかった。こんなに顔を真っ赤にしながらも、苦手な恋愛相談に乗ってくれるなんて。