なぜか推しが追ってくる。
全くもって笑いごとじゃないのだが、早坂さんはものすごく楽しそうに笑う。
その彼が、信号につかまったとき、ふと横を見て「ん?」と声をあげた。
「おい恭、あそこにいるのミズキちゃんじゃないのか?」
「え?」
早坂さんが指さしたのは、開けた小さな公園だった。
そのベンチに座る二つの人影。
一つは早坂さんが言う通り彼女で、もう一つは……彼女の男友達だという清水数馬だ。
彼女が清水数馬と一緒にいるところは珍しくない。
ただ、教室で見る様子と違い──二人といつも一緒にいる、高森真緒の姿が近くに見当たらない。
「あーあ、こりゃどう見ても放課後デートだな」
「……」
二人はそういう関係じゃないはず。今見当たらないだけで、高森真緒も一緒にいるに決まっている。
そう思うのに、早坂さんに煽るように言われれば、簡単に不安が募っていく。
「……早坂さん。事務所へは自力で戻るので降ろしてください」
「しゃーねーな。やるならとことん邪魔してこいよ?」