なぜか推しが追ってくる。
真緒は中学時代からずっと空手部に入っている。
本人いわく同じような空手部員の中ではそう強い方でもないらしいが、少なくとも数馬よりは力がある。適切な人選だ。
「それにしても転校生か。男子かな、女子かな」
「さあね。てか、瑞紀の隣の席になるよ」
「確かに! さらばぼっち席!」
わたしの今の席は、隣のいない通称“ぼっち席”。奇数人数クラスの宿命である。
窓際最後尾なのは良いんだけど、なかなか寂しいんだなこれが。
「よーし。じゃあ転校生にはお隣のよしみでたっぷり世話を焼いてあげよう。移動教室の場所とか、恭くんの魅力とか、授業でよく当ててくる先生のこととか、恭くんの魅力とか、教えること盛りだくさん!」
「転校生絶対に困惑するからやめとけ」
「全人類恭くんの素晴らしさを知れ。手始めにお前だ、転校生」
「オレはまだ見ぬ転校生に同情する。つーか武藤が雑誌無事取り戻したことだし、帰ろうぜ」
アニメか何かの悪役風に言うわたしを軽くいなしつつ、数馬は鞄を持ち直して歩き出した。