なぜか推しが追ってくる。
「わかった。無理して天羽くん呼びするのもやめる」
わたしはそう素直にうなずいて、それから言った。
「じゃあわたしからも一個いい?」
「うん?」
「推すのはやめないから」
これはもう癖だし。
恭くんのことが恋愛感情という意味の好きだと自覚したけど、恭くんの素晴らしさが全世界に広まって欲しいという気持ちもどうやらちゃんとわたしの本心らしい。
「『天羽恭の限界オタク』っていうのが、まず最初に教える武藤瑞紀の情報だよ!」
「ふふ、それはそれで……だいぶ嬉しいな」
恭くんは両手で軽く口元を押さえながら笑う。
それは本気で嬉しいことがあったとき、彼が無意識にする仕草だった。