なぜか推しが追ってくる。
空手部の真緒をはじめ、わたしは演劇部、数馬は塾通いといったようにそれぞれ忙しい。
だけど、週に一度はこうして三人とも休みがかぶるので、他愛ない話をしながら一緒に帰るのだ。
今日の会話の内容は、半部以上わたしによる恭くん語りに占められていた。
──手の届かないキラキラした世界には愛してやまない恭くんがいて、身近な場所には一緒に過ごすのが楽しくてたまらない親友たちがいる。
控えめに言って、今のわたしの日常はすごく幸せだ。
そんな日常を、家に着く頃には存在をすっかり忘れてしまっていた転校生によってぶち壊されるなんて、誰が想像できただろう。