なぜか推しが追ってくる。
当然ながら、先輩方も一年に天羽恭という若手俳優が転校してきたことや、わたしがその大ファンなのは知っている。
だけど、学年が違えば積極的にアプローチしない限りは接点がない。実際に恭くんを見たのはこれが初めてのようだ。皆さん軽く震えてらっしゃる。
「て、ていうかさ、武藤ちゃん天羽くんと仲良くなったの? スゴくない……?」
「えっとまあ……隣の席なので、成り行きで」
適当にぼかして答えれば、先輩たちは「きゃああ!」と歓声を上げる。
「推しが隣の席に来るとか運命すぎる! 毎日どんな気分!?」
「ええと……うーん、毎日煩悩との戦い、ですかね」
今日はその煩悩に負けて写真お願いしちゃったしな。
「おーい皆、そんな隅に集まってないで始めるぞ?」
見学者である恭くん放置でしゃべっていたからか、やがて部長から注意のお声がかかった。
その声を合図に、先輩たちは不満げながらも持ち場へ戻っていく。