なぜか推しが追ってくる。
恭くんは少し考えるように首をかしげて、それからどこか寂しそうに微笑んだ。
「……俺とは違うなって思った」
「え、あはは。そりゃプロと部活は全然違うでしょ」
「そうじゃなくてさ。本当ただ純粋に、演技をすることや作品を作ることを楽しんでるっていうのがよく伝わってきた。自分たちの感じる楽しさを、観客にまで伝えらる演技だと思う。そこが、俺と違う」
当たり障りのないお世辞を想定していたわたしは、その答えにひゅっと息を飲んだ。
待ってよ。それはまるで──
「恭くんは、演技をするのが楽しくない?」
「……うん、そうかも」
彼は少し目を伏せてうなずいた。
あまりに軽く素直な肯定だった。
「心から楽しいって思えた時期もあったけど、今はもうプレッシャーの方が上だよ」
「プレッシャー……」
「つい最近まで、この仕事を続ける意味も見失いかけてた」
「そんな」
「……なんてね」
そう言った次の瞬間、恭くんの顔にはもう笑みが浮かんでいた。
それは、今言ったことはは全て冗談だったとでもいうように明るいもので。